合言葉を決めよう、と言って「やる気は」「ある!」てのはどうだろう、ってあたしが言った。「やる気がなくてもとりあえず勢いよく”ある!”て言ったら、何かやる気ある気がするじゃない??」て。またあたしが言った。「ある!て言えなかったら、部屋に入れない、てことで」って。またあたしが言った。たまに脳に1度思考がめぐる前に勝手に口が動くことがある。あれは、きっとあたしのせりふではない。だから客観的に、あぁなるほどな、て思ってた。自分の口から出たせりふに。
 この人は、誰だろう、ってよく思う。あたしからつながったこの腕とか、足とか、鏡にうつった人を見て。誰だろう、て。あたしがあたしだとしたら、あたしが入ってるこの入れ物は、誰だろう。入れ物は入れ物でしかないからあたしが動かしてるわけだけど、たまにこの入れ物が勝手に動く。それで、あたしはドキっとする。入れ物は時に暴走し、あたしは面白がりつつも、入れ物とあたしの間にできたズレに居心地の悪さを感じる。入れ物とは、いつも違和感なく密着していたい。