この人がすき

今日は学校。
今日の先生はアートディレクターの藤本やすしさん。
BRUTUS、VOGUE、GQ等の雑誌のデザインをされたりしてる方。
12月にも藤本さんの授業はあったんだけど
その時はファイルを提出しなかったので、今回が初。



まだ作品ファイルの中の絵の数も少ないし、
見てもらう程ではないし、ホントに。
だから前回は出さなかったのだけど
でも何を言われようと一応出して見てもらった方がいいなぁと思って
今日は出すことにした。


藤本先生はアートディレクターという、
イラストレーターを使う立場」で絵を評価する。
これは使える、使えない、こんな絵はいらない、これはいい、
上手だけど古くさい、味があっていい、ダメ、嫌い、と。
ズバズバと切っていく*1
自分が言われてるわけではなくってもグサリ!とくるくらいにズバズバと。
自分のファイルの中の作品を評価される時に
自分も前に出て、藤本さんと向かい合って座って会話をしながら
評価をされるので、あちらが評価をするだけじゃなくって
こっち(生徒側)にもイロイロと質問をしてくる。


全員が、ではないけど
「どうゆう風にやっていきたいの??」と聞かれることが多い。
イラストレーターには大きく分けて2種類あって
HOW TOものの、解説イラストと、キャラクターで勝負するイラストと。
どっちなのか、とか
ファッションイラストをしたいにしても具体的な雑誌名を聞かれたりとか。
それとも「イラストレーター」ではなく「画家」になりたいのか、とか。
絵本や童話の絵がやりたいの、とか。


前に出た生徒がその質問をされて答えているのを見る度に
あたしは何て答えたらいいんだろうって思っていた。
あたしはイラストレーターになりたいと思ったことはない。
じゃあ、何でここにいるんだろうか。
イラストレーターになりたいわけじゃなかったら
高い学費*2払って、そして時間を割いてまでしてここに来なくてもいいじゃないか。
プロになりたいと思ってる人に交じって
授業を受けて何がしたいんだろうか。
あれ?!あたし、何でここにいるんだろう。
そう考えてたら段々段々分からなくなってしまった。
何か*3を発信したくて、それでその「何か」を発する時に
自分で絵が描けたらいいなぁって思って、
今はその「何か」を発信する準備段階にいる。
それは自分で分かってる。


でもあたしが今いるのはイラストの学校だ。
目の前にいるのは「イラストレーター」を使う職業の人だ。
その人にこれから絵を見てもらうのだ。
イラストレーターになって絵を使ってもらいたい」と思ってないあたしが!!


一体何を見てもらいたいんだろう。
「どうゆう風にやっていきたいの」と聞かれて
イラストレーターになりたいと思いません」ってあんた、それ!ちょっと!
そんなこと言ったら
評価もくそもないじゃないの。
イラストレーターになりたいと思ってるわけでもなくて
仕事がしたいと思ってるわけでもなくって
自分で勝手に描いてる絵に藤本さんは評価なんてしないじゃないか。
何だろう、何だろう。
何て言うか
ぱん焼いてそのぱんにつけるラベルに自分で絵を描いたら
かわいいなっっとか、あたしが考えてるのはそういうことだ。



ちょっと待って下さい。
何なんだろう。
あたしは何をしにここに来てるんだろう。
あれ???
何て言ったらいいんだろう。


自分の順番がくるまで
そんなことをずっと考えていた。
だって、分からなくなってしまったんだ。
いつもいつも「あ、これやったらおもしろいかも!」
と思って突発的に行動してきた。
考えてみたらこの学校に来たこと自体「おもしろいかも!」の
突発的行動の一部なんだわ。
あらあらあらら……



ま、そんなわけで脳内ぐるぐる状態。
あたしは何なんだ状態で自分の番が回ってきた。
案の定どうしたいのかを聞かれて
「自分でも分からない」と答えた。
これ以上に今のあたしをあらわすことができる言葉はない。
今後何かしたいかじゃなくって自分がやってきたこと自体分からなくなってるんだよ。



ファイルをパラパラと見ながら藤本さんは
「これはデッサンですね。まだ評価できる段階じゃない。
 これから一歩進んだ絵を描いていかないと」とおっしゃった。
あたしは色を塗るのがすきじゃなくて線を描いてるのがすきだから
ホントに、人物とかデッサンのままなので
「これは作品ではない」みたいに言われてもベつにショックではなかったし
藤本さんを前にしてもまだ「何なんだ、自分は」というのがぐるぐるしてたので
「そうですね」と答えたままぼんやりとしていた。
藤本さんは「この中で1番いいのは …」と言ってファイルの1番前のページを開いた。
藤本さんが1番いいと言ったのは
ファイルの1番前のページに入れてたコラージュ写真だった。
ぼんやりしていたのにあまりにびっくりして
「それ!前にも褒められました!」と声を出してしまった。
「僕に??」
藤本さんにそう聞かれて、違います、と答えながら
前回の授業のことを思い出した。
先々週の授業でファイルを提出した時に
その日の先生のヒロ杉山さんにも「これいいね」と言われたのだ。
ファイルを閉じた時にじっとこの表紙を見て、
それからあたしを見て「いいね」と。
執着したわけじゃないし、一言だけ「いいね」って言われただけだから
ヒロさんの好みだったんだろうなって思った…ていうか
「ありがとうございます」と答えながら別に気にも止めなかったのだ。


それをまた藤本さんにも「いい」と言われたので驚いてしまった。
友達やそこら辺の人に「いい」と言われたんじゃなくて
アートディレクターとイラストレーターていうプロの人に立て続けに言われたので
「何、このコラージュ、何で目に留まるんだろう」って不思議だ。
A4のファイルに入れてる写真サイズのコラージュで、
色も派手じゃないし*4、何よりメインはそれ以降のページのイラストなのに
なんでこんなやつが目につくんだろう。
とか、
まぁそんなことが頭の中を駆け巡る前に
「あの、(絵を描くより)こういうことの方がすきなんです。
 切ったり、貼ったりすることの方が」と、声に出してしまっていた。
その後に「立体的に変化するものを作るのがすきだ*5」とも
言いたかったけどそこは声に出なかった。
「レトロな感じもいいし」
と藤本さんは言ってくれて
「!!!こういうことがやりたいんです。
 あの、こういうことをする時に絵も描けたらいいなぁと思って。
 絵も、足して作品が出来たらいいなぁと思って。」
とまた声に出してしまった。
よくしゃべる。びっくりした。自分に。
頭で考える前に言葉に出てしまうんだもん。ちょっとは考えて
文章作ってから声に出してくれとも思う、自分に。



それで、
は!!!!!!!!っっとしてしまった。
そうだ、あたしはこういうことがやりたいんだよ。
イラストレーターになりたいんじゃなくって
こうやって繋ぎ合わせていって、それでそこに絵も付け加えたいんだった!!
「あっっっっっっ!そうだ、そうだ、そうだ!そうだったわ!!!」
何か、今日授業が始まってからずっとずっとぐるぐるぐるぐる
悶々悶々悶々としてたけど
すごくすっきりした。


「いいじゃないですか。
 そういう風にやっていっても。
 全然いいですよ」*6
藤本さんはそうおっしゃいながらあたしにファイルを渡してくれた。
「ありがとうございました」
とお礼を言って席に戻りながら
すごくすっきり爽快な気分になっていた。


あたしは別にイラストで飯を食っていこうとは思ってないから
だから絵にその気持ちも入ってて
それが「評価できる段階ではない」んだと思う。
でも
表紙に入れてた1枚のコラージュは
未完成なものであるにせよ自分がやりたいとか楽しいとか思ってる気持ちが
入ってるものだからプロの方の目に留まったんだろうなって思う。
ヒロ杉山さんと藤本やすしさんが
ほんの一言「いいね」っておっしゃてくれたおかげで
自分がやりたいことを思い出せた、再確認できた。
大絶賛されたんじゃないことはちゃんとあたし分かってますよ、
ほんの少し引っかかってもらえたっていうだけのこと。
でもそのほんの少し引っかかるキッカケになった小さな突起物が
今のあたしの「これやってみたい」っていうことへの気持ちだったんだろう。
それに気づくことができるプロの方の鋭さ*7に感動した。
そして肝心な絵を「評価できない」って言われてるのに
感動してる自分アッパレだ。



あたしの短所は自分全肯定で自分だいすきなトコだ。
何言われても何考えててもプラスばっかりで
自分が1番だ。



でもイイ。
そんなおかげで
おまけで褒めてくれたようなトコだけがココロに残って
それで
「あたしはこうやってくべきなんだわー!やっぱり」とかって
うきうきしちゃってるんだから。
お前、絵をちっとも褒められてもないんだぞ、
ちょっとは落ち込んでショック受けてろやってそんなこと言われても知らない。

*1:今日は入学希望者の為の公開授業で後ろの方に見学者の方がいっぱいいた。その見学者の人が小声で「あんなこと言われたら泣くわ」って言ってたんだそう。誰も泣きはしないど、それくらいズバズバいうのよ、藤本さん。

*2:そんな大げさにいう程高くはないけど。米を買うお金と化粧水を買うお金とシャンプーを買うお金がないあたしにとっては超大金です。

*3:「何か」って書くと具体的ではないけど自分の中ではその「何か」がなんなのかは分かってる。決めてる。

*4:コラージュとか言って全然こった作品ではない。1枚の写真をくり抜いてそれを別の写真の上に乗っけてるだけ。使用写真2枚のコラージュ。女子乙女高校生のプリクラ帳の方がよっぽど手の込んだコラージュしてますよ。

*5:ていうかそれはぱんのことなんだけど

*6:「でもこういう作品は著作権があるから。写真撮った人の」と、藤本さんは注意もして下さった。ステキな方だ。「こういうことがやりたい」ってあたしが言って、「そうですか」って終わってもいいのに。一言付け加えてくださるとこがステキだ。ずばずば言うけど、的確なことを手短に言って下さってるっていうことなのだなぁ。ちなみにこのコラージュの写真はあたいが撮ったでやんすので著作権は大丈夫だ。今後も著作権は大丈夫だ。だってあたいは雑誌も写真も買うお金がないもの!自分で撮るしかないもの!カメラ小僧だもの。

*7:寺井剛敏先生に「あなたはもう”ぱんで絵を描く”くらいのことをしてみたら??」って言われた時にも、感動した。ぱんのクリッティ(のん)が高くないのでその段階には至ってないけど、いつか挑戦できたらおもしろい。大人って、プロって、すごいなぁ。