お昼ごはんを食べ終わってストーブの番*1をしていたら父が
「市場に行こう」と誘って来た。
何となく今すぐに行動する気になれなかったから
「もうちょっとしてから」と曖昧な返事をしておいた。
市場に行く用意でもしようかなと自室に入り、
用意ができた所でなんとなく昼寝。


窓に雪を投げつけられる音で目が覚めて
時計を見たらもう夕方の4時だった。
市場!と思って急いでコートを着て玄関に降りると
父がものすごい厚着をして、膝まであるような長靴を履いて立っていた。
コートを着たあたしを見るなり父は
「市場にはもう行ったぞ」と言い放った。
別にあたしは市場にはどんだけ行きたかったわけでもないし
勝手に行かれたからって文句も無いけど
でも、自分から誘ったんだから、ちょっとそこんとこ考えて欲しい。
こっちは一応準備をして呼ばれるまで待っとこうて思って
うとうとして寝てしまったのだ。
起こされて「市場か!」と思って急いで2階から降りて来たんだよ!
父は まぁいいや、とか何とか言って
あたしに台所から袋数枚と包丁を取って来て
それから長靴を履くようにと命じた。


そのままうちの畑に向かった。
うちの畑の方まではさすがに除雪車も除雪してくれないし、
この道は進んで行っても墓場にたどりつくか、山奥に入り込むかの
道なのでこんな年末に通る人もいないし、雪がそのまま残っていた。
道が分かりにくくてザクザクと進んでいたら
途中で「何か怪しい」と思った瞬間雪が崩れて用水路に落ちた。
雪のせいで音があまりしなかったから
前を歩く父は娘が用水路にハマったことも気づかずザクザクと進んで行くので
あたしは1人で笑いながら足を抜いて何事もなかったかのように
父の後を追いかけるしかなかった。
長靴はいててヨカッタよ、父さん。


雪の下にうもれた人参を父が掘り、それをあたしが袋につめた。
雪の下の人参はきれいなきれいな人参色をしていた。
どれも小さかった。
人参をある程度穫ったら今度は大根だとか言って
大根の方へ移動。
さっきあたしはハマった用水路の横を通る。
今度はハマらない、当たり前だけど。

*1:ストーブの前を陣取って何もせずただむっしりと動かずにいることを母が「ストーブの番をする」と言う。多分「ストーブの番人」か「ストーブの当番」の略だと思われる。小さい頃からストーブの前から動かずに何もせずボーッとしていたあたしに母はよく「あんた、またストーブの番しとるだかいな!」と言っていた。